当ブログのおすすめアイテムとしておすすめしている航空無線受信機(エアバンドレシーバー)ですが、果たして何の役に立つのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は航空祭以外のイベントでブルーインパルスが飛来する際に航空無線受信機(エアバンドレシーバー)活用すると、どのようなことに役立つのかについて解説してみたいと思います。

この記事を読んでいただければ、エアバンド(航空無線)でどのようなやり取りが交わされているのかがわかり、ブルーインパルスが飛来するイベントをより楽しむことができるようになります。
エアバンドとは?
業務用に使用される無線機は多様なものがありますが、そのなかでも航空機が主に地上の管制官などとやり取りする際に使用される周波数帯のことをエアバンド(もしくはエアーバンド:Air Band)と呼びます。
エアバンドの他に航空無線というふうに呼ばれることもありますがエアバンド=航空無線という認識でほぼ問題ないかと思います。
このエアバンドと呼ばれる周波数を聞くことで、付近を飛ぶ航空機の動向を掴むことができます。
そこから転じて航空無線を受信できる機器のことをエアバンドと呼ぶこともあります。
エアバンドレシーバーとは?
エアバンドレシーバーとは、航空無線を受信するためのラジオのような存在です。
一般のラジオと異なるのは、値段が少し高いのと、受信する周波数帯が広いことです。
受信する周波数帯が広いので航空無線で使用されているVHFエアバンド周波数帯と呼ばれる118.0MHz~136.0MHzとUHFエアバンド周波数帯と呼ばれる225.0MHz~400.0MHz(この間で航空無線用に割り当てられている部分をエアバンドといいます)にチューニングすることで、一般のラジオでは聞くことのできない無線を聞くことが可能です。
エアバンドの交信を聞く際の注意点
日本の電波法上においては、自分で探し出した周波数を聞くことについては問題ありませんが、『その存在 もしくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない』こととなっています
また、上記の観点からもエアバンドレシーバーを利用する場合はかならずイヤホンを用いて聞くようにしましょう。
なお航空祭におけるエアバンドレシーバーの持ち込みについては可としている基地も多いですが、米軍基地(特に横田基地・三沢基地・岩国基地)においては、ここ最近はエアバンドレシーバーの持ち込み禁止のアナウンスが出されることが多い状況となっていますので注意しましょう。
ここ最近の情勢では横田基地・岩国基地・三沢基地のイベントではエアバンドレシーバーの持ち込みは禁止となっています
日本においては電波法という法律があり、電波法によると日本において無線を聞く行為については公開・非公開の周波数を問わず特に問題はありませんが、海外においては公開周波数であっても受信行為は違法とみなされ、検挙の対象となる場合があります。
イベント飛来時のブルーインパルスの動き
イベントで展示飛行を行うブルーインパルスの大まかな動きは以下のようになります
当日の基地上空・途中経路・イベント会場付近の天候を勘案して、離陸予定時間の概ね1時間前に飛行の可否を決定
ひとまずは離陸にあたって問題ない天候状況と判断されると、地上整備員がブルーインパルスの機体周辺に現れ、キャノピー(コックピットの窓)をオープン、その後飛行前の点検や、パイロットが乗り込むための準備を始めます
程なくしてパイロットがやってきてブルーインパルスに乗りこみ、無線のチェックのあとエンジンをスタートさせます
地上の飛行統制隊員と航空無線にて離陸前の最終確認を行います
会場との距離にもよるものの、イベント会場到達予定時間の15~30分ほど前に拠点となる飛行場を離陸します
イベント会場で待機するブルーコントロールとコンタクトを行い、最新の天候状況や、他の航空機の状況、イベントプログラムに合わせた会場上空到達時刻(TOT)や飛行の実施の可否を最終決定します
会場の天候状況に合わせて、事前に実施を予定していた演目を実施します。
雲の状況によっては演目の変更などについてもパイロット間およびブルーコントロールとの間で無線でやりとりされます。
予定されていた演目を全て終了するか、残燃料やノータムによるエリア確保の時間なども考慮して、場合によっては一部演目は省略して帰投する旨をブルーコントロールに伝達し離陸した基地へと戻っていきます。(RTBはReturn To Baseの略号です)
地上からブルーインパルスを統制するブルーコントロールとは?
ブルーインパルスがイベントで展示飛行を行う際は、当日の会場付近の天候状況の把握や他の航空機の情報提供などの安全なフライトのための情報支援が必要になります。
そこで登場するのが地上からブルーインパルスに対して天候状況を伝えたり、付近を飛行する航空機の情報提供を行うブルーコントロールと呼ばれる隊員たちの存在です。
kazuさんのyoutubeチャンネルにて会場のアナウンスを行うパイロットの映像がアップされていましたので引用させていただきます
2023年に宮城県の東松島市で行われた東松島夏まつりの1コマです
アナウンスを行っているのは現在は4番機の操縦を担当している佐藤 裕介 1等空尉。
後ろでブルーインパルスの状況を無線で確認しながら、佐藤さんにアナウンスのタイミングを伝えているのが、現在は2番機の操縦を担当している松永 大誠1等空尉です。
この映像にはブルーインパルスと交信を担当するブルーコントロールの隊員は写っていませんが、ブルーインパルスとブルーコントロールの交信をモニター(聞く)するために松永隊員が常にエアバンドレシーバーを利用しているのがわかります。(時折佐藤隊員もモニターしています)
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、松永隊員が2台保有しているうち小さい方の1台がアイコムのIC-R6になります。IC-R6の後ろに管理用のものと思われるシールが見えるので、飛行隊の備品として活用されているものと思われます。



手頃な値段ながら基本性能もしっかりしているIC-R6は初心者からプロまで愛用されるおすすめの一品ということですね。




ブルーコントロールがどこで任務を実施するのかについては公表されていませんが、イベントのメイン会場付近に展開することが多いようです。
地上から飛行統制を行うパイロットや隊員はブルーインパルスのつなぎや、自衛隊の制服を着て会場付近に来場します。
ブルーインパルスからは「ブルーコントロール」もしくは「オペラ」の名称で呼ばれています。
ブルーインパルス隊員によるファンサービスがあることも・・
イベントによってはブルーコントロールで地上統制やイベントにおけるアナウンスを担当するパイロットや隊員が、飛行に対応する時間帯以外を使って写真撮影やファンサービスを行う場合もあります(ただし大都市でのフライトなど、来場者が多く見込まれるイベントの場合は会場の混雑や混乱を避けるため行わない場合もあります)。
ファンサービスの実施と、実施時間や場所について主催者からイベントプログラムの一環として公表される場合もありますので、ぜひイベント主催者の公式サイトなどの情報をチェックしてみてください。
エアバンドレシーバーを聞くとわかること
以上をふまえてエアバンドを聞くことでわかることについて簡単にまとめます
- ブルーインパルスの現在位置(予定通りイベント会場に向かってきているのか)
- 展示飛行の開始時間(TOTと呼ばれるものです、詳細は後述します)
- 飛行の中断や再開の情報(天候の悪化や予定外の航空機の接近により中断する場合があります)
- 次に実施される演目(とくに撮影で役に立ちます)
- 演目開始のタイミング(撮り逃し防止に役立ちます)
- 展示飛行の終了(まだ飛んでくるの?かどうかがわかります)
特にスマホや一眼レフなどでインスタ映えするようなきれいな写真を撮りたいた方にとって、エアバンドレシーバーは撮影のタイミングを把握しやすくなる有用なツールになるのではないかと思います。
実際にプロの航空写真カメラマンにとっても、エアバンドレシーバーは撮影のタイミングを測るための必須アイテムとなっています
交信は基本的に英語ですが、日本語もそこそこ使用されます
航空無線を使用する特性上、やりとりは基本的には英語とはなりますが、細かい調整や連絡事項については日本語を使用することもあり、そのあたりは自衛隊独特の「英語と日本語を織り交ぜた交信」という形で行われる事が多いです。
つまり日常的な英会話を苦手とする方でも、特定の単語が聞き取ることができれば内容を理解することができるということです。



少しでも興味のある方は、ぜひ受信にチャレンジしてみましょう!交信内容が聞き取れた時の感動と興奮は、体験した人のみが到達できる境地です
- TOT(『Time On Target』 の略 イベント会場上空を通過して演目を開始する時間のこと)
- 区分(その時の天候状況に応じた演目のタイプ。基地祭以外のイベントでは水平系の演目の場合がほとんど)
- 演目
- レディ(演目準備完了の意味)
- レッツゴー(演目開始の意味)
- スモーク(スモークのオンオフのタイミングの掛け声)
- デルタローパス
- エコーデルタローパス
- チェンジオーバーターン
- さくら
- リーダーズベネフィットローバス
- ツリーローパス
- フェニックスローパス
ときに複雑でダイナミックな演技も行われるため、無線交信も賑やかにやり取りされるイメージがありますが、実際のところは日常の訓練飛行で無線のやりとりも含めた高度な連携プレーが完成されていることもあり、編隊間の交信内容は驚くほどシンプルです。
それゆえ聞き取りにはある程度の慣れが要求されますが、何回か聞いてくるうちにだんだん聞き取れるようになってくると思います。
なお、航空自衛隊の公式YOUTUBEチャンネルでオリンピックの祝賀飛行を実施した際にブルーコントロールとやりとししている無線交信の一部を聞くことができる貴重な映像がアップされています
このときは特別にブルーインパルスアルファとバックアップのブルーインパルスブラボーの2つの編成で飛行を行い、映像に写っているのはブルーインパルスアルファの1番機となります
【2:13のあたり】
- ブルーコントロール:ブルーアルファ ブルーコントロールゴーアヘッド
- ブルーインパルス(アルファ):ナウホールディング アット 王子(王子上空で待機中) 3000(feet)
- ブルーコントロール:ラジャー (気象)現況変わらずです ヒュー 3500 スキャター4000 QNH2987 ※気象情報については民間機も使用する航空気象通報式と呼ばれるフォーマットに基づいてやり取りされています
- ブルーインパルス:QNH2987 ブルーインパルスアルファ 下から見て雲 空きありそうですか?
- ブルーインパルスコントロール:ここの上空(会場上空の雲)については8分の1から8分の2 進入経路は8分の3くらいだと思います
- ブルーインパルス:了解 TOTの変更はありますか?
- ブルーコントロール:まだです スタンバイお願いします
- ブルーインパルス:スタンバイ了解 ブルーインパルスアルファ
【2:55のあたり】
- ブルーコントロール:ブルーアルファー ブルーコントロール
- ブルーインパルス:ゴーアヘッド
- ブルーコントロール:TOT 変更 ひとふたよんひと(12:41) ひとふたよんひと
【3:09 5:53 7:04 のあたり】
リーダ機の「スモーク!」の掛け声とともにカラースモークを曳いて飛行する模様を収録
ちなみにVRという言葉に気がついたあなた!
実はこの映像内をマウスを使ってドラッグすると全周囲の映像を見られます。ぜひいろいろ触ってみてください。
なおamazonなどで比較的安価に購入できるVRゴーグルに、ご自身のスマホをセットしてこの映像を見ると驚愕の臨場感を味わうことができます。





筆者はこちらを購入して上記の空撮映像を見てみましたが、初めての体験にしばらくの間、興奮状態がつづきました。恐るべしVR技術です・・。
ブルーコントロールとの具体的な交信の例
すこし話が脇にそれてしまいましたが、前述の映像では無線交信が省略されている部分がありますので、ここで架空の交信例を基に解説してみます
(実際の交信をベースに筆者が作成したフィクションです)
ベースとなる飛行場を離陸したブルーインパルスは、会場に近づく前に前述した地上統制を行う「ブルーコントロール」と交信を行います。
ブルーインパルスがブルーコントロールと交信を開始するのは、プログラム開始予定の概ね10分前程度が目安です(会場によって多少異なります)



Blue control,Blue Impulse Radio check.
ブルーコントロール ブルーインパルスレディオチェック
(ブルーコントロール ブルーインパルスです聞こえますか?)



Blue Impulse,Blue control, loud and clear.go ahead.
ブルーインパルス ブルーコントロール ラウド&クリアー ゴーアヘッド
(ブルーインパルス ブルーコントロールです良好に聞こえてます どうぞ~)



Also loud and clear.now over 〇〇.ウェザーお願いします
オルソー ラウド&クリア. ナウ オーバー 〇〇(同様に良好に聞こえています。〇〇ポイントを通過しました。会場付近の天候状況を教えて下さい)



ラジャー 視程10km以上 No ciceling QNH29.78 会場の北東にある山の付近の雲は Few 4000 フィート ※



ラジャー。TOTは予定通り14:00でよろしいか?



予定通りでお願いします。会場進入1分前をコール(知らせてください)



会場進入1分前をコール。了解
その後、1番機はブルーコントロールから伝達された会場付近の天候状況と周辺の雲の状況を勘案して、展示飛行を開始する前に僚機(2~6番機)とブルーコントロールに実施する飛行区分を伝えます



スタートミッション 5区分!



ツー(2番機了解)



スリー(3番機了解)



フォー(4番機了解)



ファイブ(5番機了解)



シックス(6番機了解)



ブルーコントロール ブルーインパルス 1分前



オペラ了解。クリアエンター(本部、5区分での飛行実施と会場上空まで1分前了解。会場上空進入問題なし)
TOT(会場到達予定時刻)どおり会場上空に接近し、いよいよ飛行開始です。
デルタローパスを実施する際の交信例
1番機は都度、実施する演目を2~6番機に手短に伝えます
ここでは定番の演目である『デルタローパス(デルタL/P)』を実施する際の交信例を見てみましょう



デルタローパス ゴーポジション(デルタローパスを実施する)



ツー(2番機了解)



スリー(3番機了解)



フォー (4番機了解)



ファイブ(5番機了解)



シックス(6番機了解)



レーーディッ!!(展示飛行準備完了)



ラジャ(1番機了解)



ワン スモーク!!(スモークオン) デルタローパス レッツゴー(デルタローパス 開始)
ここで演目開始(会場上空をスモークを曳いたブルーインパルスが通過)





スモーク!!チャーリー(スモークオフ 基本形態に移行せよ)
ここで1つの演目終了
の繰り返しで設定された時間内で演目を行っていきます。
さくらを実施する際の交信例
ここでもう一つ、上空に桜のマークを描く人気演目、『さくら』の実際の交信例を見てみます
こちらは航空祭における飛行シーンですが、交信の流れはそれ以外のイベントにおける飛行と概ね同じ流れで行われます
実際に見て貰うとわかるとは思いますが、前の演目である『ボントンロール』が終わるやいなや次の演目である『さくら』を宣言しています



つまりそこそこ早い段階で次にやる演目が把握できるということになります。これがエアーバンドを聞くメリットの一つです。
そして、『さくら』の演目終了間際に次の演目である『タック2(タッククロスのパターンⅡの意味)』を宣言して演目を移行していきます。
そして予定されていた演目が終了、もしくは飛行設定時間が終了間近になったタイミングで、展示飛行を終了して基地に帰投する旨をブルーコントロールに伝えます



ブルーコントロール、ブルーインパルス。ミッションコンプリート RTB(Return to Base)。(ブルーコントロール ブルーインパルス 展示飛行を終了した。離陸した基地に戻る)



オペラ了解。グッドミッション お疲れ様でした。
その後、ブルーイパルスは付近の空域の管制を行うアプローチの周波数やGCI周波数(非公開)にコンタクトを行いながら、展示飛行の拠点となる飛行場へ帰っていきます。
オススメのエアバンド受信機について
ブルーインパルスとブルーコントロールのやり取りは、基本的にはUHF帯と呼ばれる225.0MHz~400.0MHzの間のいずれかの周波数でやり取りが行われることが多いです
そこでUHF帯の周波数を受信できるエアバンドレシーバーがおすすめです。
当ブログでは手頃な値段でハイスペックな機能を備えるIC-R6をまずはおすすめしています


イヤホンを忘れずに
前述のとおり、電波法に則り無線を受信する観点からもイヤホンを忘れないようにしましょう
交信が行われている周波数の探し方
周波数探しが一番ハードルが高いかもしれません
というのも、ブルーインパルスが使用する周波数はイベント毎に異なるものが使用されるからです。
飛行場の近くにおいては、その飛行場で使用されているUHFの航空管制の周波数。
飛行場からは離れた場所をフライトする場合はGCI等の非公開のUHF周波数が使用されることが多いです。(非公開であっても聞いた内容を第3者に漏らさなければ、探し出して聞くのは電波法上問題はありません。)
また、UHF周波数のない民間飛行場の近くを飛行する際は稀にVHF周波数を利用することがあります。



それゆえブルーインパルスの使用する周波数を見つけられたときのエキサイティング感は宝探しのようで、これが病みつきになります。
そこで私がおすすめしているのがIC-R6でプログラムスキャンを行う方法です
最初のUHF周波数のプログラムスキャンのための登録作業については少しわかりにくい部分もありますが、一度プログラムスキャンの登録が完了してしまえば、それ以降は簡単に周波数のサーチをおこなうことができるようになります。
イベントでブルーインパルスのフライトを見て感動した方には
ブルーインパルスが航空祭以外のイベントでおこなう展示飛行は基本的には【5区分】と呼ばれる区分で実施されることが多いです
5区分は安全上や空域の制約などにより垂直系の演目は実施されず、水平系の演目が中心となります。
つまり、ブルーインパルスの本領が全て発揮されているわけではない状態と言えます。
ブルーインパルスの持てるポテンシャルの全てが発揮されるフルショーである【1区分】の演技が見られるのは航空祭などの航空イベントとなります。
もし、イベントにおけるフライトでブルーインパルスに興味を持たれた方はぜひ航空祭にも一度お出かけしてみてください。
ご参考までに航空祭における垂直系の演技を含めたブルーインパルス展示飛行【1区分】の模様はこちらからご覧いただけます
ブルーインパルスのエアバンドを聞くと何がわかるの?ブルーコントロールってどんな人達?【航空祭以外でのイベント編】については以上となります。ここまでお読みいただきありがとうございました。
※本記事の情報は可能な限りのリサーチと、筆者の実体験に基づき、個人的推測を交えて構成されています。フィクションの無線交信のやり取りを含め一部実際と異なる場合があります旨ご了承ください。

