2024年も全国あちこちの空を飛行する予定のブルーインパルス
飛行を予定している基地や市町村の主催者から飛行の概要について事前に発表されることも多いですが、AIS JAPANから検索する事のできる航空関係者向けの通知であるNOTAM(ノータム)と呼ばれる情報を参照できると
- 予行飛行の日時
- 飛行の中心となる点
- 予備に設定されている飛行時間
- 飛行高度
などについても細かく知ることができます。
NOTAMはブルーインパルスの飛行情報についていち早く情報を掴みたい人には有益な情報ですが、通知の内容はすべて英語の略号の組み合わせとなっており、読み方にはちょっとしたコツが必要になってきます。
本記事ではブルーインパルスのNOTAM(ノータム)を読みこなす際のポイントについて解説してみたいと思います。
実際のNOTAMの例【基地上空で飛行する場合】
2023年5月28日に開催された航空自衛隊美保基地航空祭でブルーインパルスが予行飛行を実施した際に出されたNOTAMがこちらです
190653 RJAAYNYX
(0112/23 NOTAMN
Q)RJJJ/QWALW/IV/M/AW/005/060/3530N13314E005
A)RJOH B)2305270030 C)2305270130
E)AIR DISPLAY TRG:
1 AREA:WI 5NM RADIUS OF 3530N13314E
(SAKAIMINATO-SHI IN TOTTORI)
2 ACFT:6T4(BLUE IMPULSE)
3 WX MNM:CEIL 1500FT VIS 5KM
F)500FT AMSL G)6000FT AMSL
はじめて見るに人には「なんじゃこりゃ~!?」な感じで見事なまでにアルファベットと数字の羅列になっていますね。
これは航空業界のプロが使用するNOTAMの形式に則って表記されているもので、ある程度コツをつかめばざざっと読み解けるようになります
国土交通省が発行する『AIP(エーアイーピー)』と呼ばれる情報の中にNOTAMのフォーマットについて解説しているページがあります
それがこちら
「ますますわけがわからん(怒)」という声が聞こえてきそうです
わたしも最初見たときはそんな感想でしたが、何度か目にしているうちに
必要な部分だけ読み解ければいいのか
ということに気づきました。
ということでまずは上記、美保基地航空祭のNOTAMを例に最低限必要な部分について解説してみたいと思います。
- ノータム番号
- 飛行場所
- 飛行日時
- 飛行の内容
- 飛行する航空機
ノータム番号
ノータムは英語と数字の羅列となりますが、状況により細かな数字が変更になったりする場合があります。
たとえば天候不良によりブルーインパルスの飛行時間に変更が入ることがあり、最新のノータムを漏れなくチェックしたいという方はノータム番号も一緒に見ておくことをおすすめします
ノータム番号は 数字4桁/(スラッシュ)数字2桁で表されます
スラッシュのあとの数字二桁は年号の略号となり、例えば2024年に発出されたものはすべて『24』が入ります
それにもとづいて解読しますと上記の場合は2024年に発出された112個目のノータムということになります
なお、そのあとにあるNOTAMNとあるのは新規に出されたノータムを意味します
飛行場所
AについてAIPには「地点略号」とありますが
地点略号とはICAOが決めている空港を4文字で表す表記のこと
Googleで検索すればすぐわかりますが美保飛行場あるいは米子空港の意味です
(美保飛行場の敷地に隣接して米子空港のターミナルがあるため)
NOTAMの開始時刻と終了時刻
B)がNOTAMの開始時間 C)がNOTAM終了時間をあらわします
2305270030を読みやすく区切ると23/0527/0030となり
さらに読みやすく解読すると 23年05月27日00時30分ということになります
ここでポイント
航空の世界、特に国際線の世界ではいろいろな国ごとに標準時間が異なる(日本では明石市)なかを飛び回ることになるためある一つの時間にあわせて飛ぶことにしようというルールが存在します。その時間のことを協定世界時(UTC:Universal time coordinated)と呼びます。
なお、協定世界時=イギリスの時間となっています。
つまりNOTAMの時間はイギリスの時刻ということになります。
そして日本とイギリスは9時間の時間差があるため、UTCを日本時間になおす場合はUTCに9時間を足すことで計算できます。
つまり上記については日本時間の午前9時30分から10時30分までの間ということになります
予定時間
NOTAM時間のなかでさらに飛行の時間を限定していたり、予備の飛行時間が設定されている場合は
こちらに時間が入る場合があります。
※上記の美保基地での予行のようにブルーインパルスのNOTAMによってD)の記載が省略される場合があります
NOTAMの内容
E)はNOTAMの内容になり
【AIR DISPLAY TRG】は展示飛行の訓練、
つまり予行という意味です
本番の場合【AIR DISPLAY】となったりします
さらに1~3についてみてみますと
1.AREA
2.ACFT
3.WX MNM
の順に記載されています
1. AREA:WI 5NM RADIUS OF 3530N13314E (SAKAIMINATO-SHI IN TOTTORI)
ブルーインパルスが飛行する際の使用エリアについて緯度経度表記の中心点と半径で表されます
訳すると北緯35度30分 東経133度14分(美保基地の中の地点)を中心とした半径5NMの円のエリア
1NMは1.8Kmなので1.8✕5で半径9kmの円ということになります。ブルーンパルスであれば数分以内に飛び回れる範囲です。
また(SAKAIMINATO-SHI IN TOTTORI) → 鳥取県境港市 のように目安として飛行する地点名が併記される場合もあります。
2.ACFT:6T4(BLUE IMPULSE)
これは解説がなくてもおわかりになれますね。6T4は6機のT4ということになります。
ちなみにBLUE IMPULSEという文字が入らない場合も多いです。
3.WX MNM:CEIL 1500FT VIS 5KM
飛行にあたっての最低気象条件を意味します
視程が5km 周辺の雲の底の高度が1500ft以上の場合に飛行を行うという意味です
わかりやすく言うと雲の中に入らず(地上が見える状態で)飛行できる気象状況ということです。
下限と上限の高度
プラスアルファの情報として知っておきましょう
Fが下限高度 Gが上限高度を表します
AMSLはAbove Mean Sea Levelのことで飛行場の標高ではなく海抜高度を意味します
離発着時を除き飛行展示の一番低い海抜高度が500ft 最も上昇する高度が6000ftという意味になります
エアバンドレシーバーを使用すれば鬼に金棒!?
実際の飛行に際してより詳細な状況を掴みたければブルーインパルスの無線交信を受信してみることをおすすめします。
エアバンドレシーバーでパイロットとブルーコントロールと呼ばれる地上統制の交信がキャッチできると、ブルーインパルスの次の動きが手に取るようにわかるのでおすすめです。
実際に私はノータム情報で飛行の時間帯や飛行エリアの情報をキャッチしてお出かけして、イベント会場についた後、エアーバンドでより詳細な飛行内容を先取りして補足し、かなり高精度に動向を把握することができています。
パイロットや航空関係者を志す人におすすめの一冊
NOTAM(ノータム)は(Notice To Air Men もしくはNotice To Air Mission)の略称となります
将来パイロットや管制官など、航空機の運用に関わる職業になることを志す人はノータムを読み慣れておく必要があります。
そこでおすすめしたいのが日本操縦士協会から発行されているAIM-J(Aeronautical Information Manual-Japan)です
AIM-Jはプロ向けの書籍であるため値段は高めですがノータムの情報についての解説はもちろんのこと、航空機の運航に必要な基本的情報、一般的な飛行の手順、ATCのプロシージュアを記載しています。
また、気象に関する基本的な情報、航空の安全に影響を与える諸要素の解説、日常の運航に参考となる諸資料および航空管制に関する用語の解説も含めて解説されています。
表紙は英語表記ですが中身は日本語による解説となります
ただし英字版も販売されていますのでご注意ください(英字版は国土交通省航空局監修の部分も英語表記となります)
まとめ
以上ブルーインパルスのノータム情報の読み方の解説でした。
イベントによってはこの他にも戦闘機による飛行展示の予行飛行の情報が見られたりします。
読みこなせるようになるといろいろと有益な情報がつかめたりしますので是非活用してみてください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。